キューバ フベントゥド島(青年の島) 空港から車で10分程の場所にある『プレシディオ・モデーロ刑務所(Presidio Modelo)』。1926年から1928年にかけて建設され 1967年に政府によって閉鎖されました。閉鎖されてからちょうど50年 現在は博物館として公開されています。
プレシディオ・モデーロへは緑が茂るのどかな道が続いていて そんな道を車で走っていると突然黄色い建物群が現れます。最初に目にするのが今は研究センターとなっている建物で たしか以前は管理棟だったと教えてもらいました。そのまま敷地の中へすすむと 巨大な円筒形の収容施設が見えてきます。
とにかく広い敷地に巨大な建造物が並んでいて まずその迫力に圧倒されます。あたりは山と緑と空のみでとても静かで この穏やかな自然と威圧感のある建物のコントラストが何とも言えない雰囲気。近づけば近づくほど歴史を感じさせる姿にさらに圧倒されます。
最初は「CIRCULAR3」と書かれた収容施設の1つへ。入り口を入ってすぐにあるのは 左右にのびる閉鎖的な通路。1階の外周にあたる部分でおそらく看守用です。中とは隔離された造りで 実際は写真よりも暗く奥へは足を踏み入れたくない感じでした。
通路を横切り広い空間へ。
一歩中へ入った瞬間思わず息が止まる そんな感じ。長い間無人で風雨にさらされたせいか すっかり抜け殻のようで恐ろしさは感じませんでしたが ただ建物としての迫力は失われていません。半分ほどの屋根がないおかげで建物の中に日が差していますが この明るさがなければまた違った印象を残したと思います。
この円筒形の建物はパノプティコン(Panopticon)型と呼ばれ 全展望監視システムという意味だそうです。看守は建物の中央にある監視塔に少人数のみ。それでも収容者から監視塔の様子が見えないように中心部を暗く目隠しすることで 常に監視されている、またはいつ監視されているかわからないという意識が働き 規律を守らせることができるのだとか。
こちらはおそらく当時の写真だと思われるもの。どんなに優れた監視システムで安全だとわかっていても 自分を囲む360度全てがこの景色だなんて想像もしたくない。
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壁面は5層の小さく区切られた部屋になっていて 数カ所に設置された階段から2階部分へ。
実際に部屋の中に立ってみると思っていた以上に狭いく 1人が寝るのに最低限必要な広さといった感じ。
窓からはこんな景色が望めます。当時こんな風に外の景色を眺められたのかはわかりませんが。
余計なものはなく整然と並ぶ部屋以外にあるのは 各層を移動できる階段のみ。かなり崩れてきている場所もあり このまま崩壊がすすめば そのうちこうしてありのままの姿を見ることもできなくなってしまうかもしれません。
次は敷地のちょうど中心にある食堂へ。
こちらも中に入ってみると 全く仕切りのない圧倒的な空間が広がっています。
床に固定された鉄組に板を渡してテーブルとして使用し 1度に何千人もが食事をしたといいます。しかも一切の会話は許されておらず 常に静寂の中での食事だったとか。
中央にある柱にかけられた螺旋階段。
こちらは壁際に1つあったエレベーター。ここは2階なので1階との荷物運搬用でしょうか。装飾のない建物なので 扉の蛇腹ですらおしゃれに見えてきました。
食堂をでるとさらに敷地の奥へ。ここへ着いてから全く人と出会わなかったのですが 建物の中から話し声が聞こえてきたので覗いてみると そこは博物館になっていました。敷地の一番奥にあり 病院として使われていた建物だそうです。特に案内などはでていませんでしたが 入り口のキューバ国旗が目印です。
最初に案内された展示室。入館料とは別にFOTOのお金を払えば撮影もOKです。
歴史を考えると消失した資料もたくさんあると思いますが 当時使用されていた道具や残された資料などが展示されていました。第二次世界大戦中は島に住む日本人も収容されていたということで 一部日本人に関する資料もありました。展示物は全てスペイン語のみの説明なのでもちろん読めませんが 何かを感じとるには十分です。スタッフの方も英語でですが丁寧に話を聞かせてくれました。
おそらくこちらは1日のスケジュール。朝5時から起床、点呼、朝食と続き 夜9時に就寝。1時間〜1時間半刻みの細かいスケジュール。
向かいの展示室には当時の様子が再現されていました。1つ1つのベッドの枕元には 1人1人の写真と名前の記録が。真っ白いシーツのかかったベッドがずらっと並んでいる様子は なんとも言えない思いにさせられます。
こちらはモンカダ兵営を攻撃し逮捕された際に フィデル・カストロ(Fidel Castro)さんが収容されていた部屋。解放されるまでの約2年間をここで過ごしたとされ 当時の写真もいくつか見ることができました。
こういった場所へくると全く想像も及ばないことや 言葉にできない思いばかり。それでも素晴らしい体験になったことは間違いありません。