岡山県倉敷市 ジーンズの聖地といわれる児島。ジーンズストリート(KOJIMA Jeans Street)の端に趣のある建物があり惹かれるように中へ。通りから見える部分は「長屋門」といい 中に入ってみて立派な建物と約3000坪もあるという敷地の広さに驚きました。
Source:http://www.nozakike.or.jp/
ちょっと覗いてみようという軽い気持ちで入ったのですが 予想以上の見応えに感動。落ち着いた佇まいの建物に 鮮やかな緑と草木がつくる光と影が最高に美しい。
今は閉じている御成門から表玄関とを繋ぐ庭。入っていきなり静かな緑に心奪われます。
そこから「表書院」を囲う庭園へ。庭の奥 緑に埋もれるように見えている建物は「観曙亭」と呼ばれる茶室。
門に一番近い場所に位置する表書院は応接間として使用された場所らしく 戸が開け放たれた室内はとても広くて 庭を眺めるのに最高の場所。縁側の端には水琴窟もありました。
その先にあるのは「容膝亭」と呼ばれる茶室。容膝亭は庭内に3つある茶室の中で一番大きなもので 近くにいた係の方から天井が素晴らしい造りだと教えていただき 茶室独特の狭い躙口から身を屈めて天井を拝見。
この天井の装飾は網代というらしく 薄く切った木を編んで作られたもの。機械などなく職人さんの腕だけで造られていた時代 どれだけの技術と技がここにつまっているのか。
さらに奥にあるのは敷地内で一番大きな建物「中座敷」。
中座敷は縦にずらっと小部屋が並んでいて 外の眺めが良い手前の庭に面した部屋から順に格の高い部屋とされているそうです。
すぐ横に3つ目の茶室があり 茶室から続く石橋の上から鑑賞した庭がこちら。一面に広がる苔が池を表しています。手前にある大きな石は何に見えますか?と係のおじさん。ある角度からは大きな爪をもつ蟹で 別の角度からは大きな亀だと。言われてみると次第にそのようにしか見えなくなるから不思議です。
その先は敷地の一番奥に当たる部分。高くそびえる石垣もここの主人が屋敷の一部として造ったものだそう。様々な形の石が隙間なく並んだ石垣は 素晴らしい技術の元に造られたことがわかります。職人さんが自分の仕事の証にと たくさんの石の中に1つ扇型の石を積んでいる場所があるとのこと。結局自力で見つけることができず教えていただいたのですが なんだか粋でかっこいいです。
石垣に沿うように位置するここから先は台所や水回りなどの生活エリア。大勢の従業員を雇っていたことが伺える 従業員用の広い台所や食堂には当時使用されていた道具が展示されていました。展示品というよりは なぜか今でも現役で使われているような雰囲気で見るもの全てに興奮しっぱなし。
棚の上に置かれた「時化(しけ)提灯」。「しけ」というくらいなので荒れた天気のときに使用されたのでしょうか。
敷地内には「蔵」とつく建物が7つもあり そのうちの1つが「味噌蔵」。入ってすぐの場所に大小様々な桶が 使用後そのままという形で置かれていました。
奥にはなんと立派な麹室までありました。入口には小さな黒板と温度計。壁際にいくつも積み重ねられているのは おそらく麹を寝かせる時に使用する麹蓋。麹蓋の側面には「明治/大正●年新調」の文字。
敷地内をぐるっと1周して最後に大きな蔵が5つ並ぶエリアへ。そのうち2つは展示館として開放されており中に入って見学することができます。展示されているのは製塩の歴史や調度品、生活用品など。
野﨑家旧宅は貴賓をもてなす庭園や茶室が素晴らしく 当時の暮らしを見学するというより生活の中へ入り込んでしまったように感じる 当時の空気を残した素敵なお屋敷でした。
http://www.nozakike.or.jp/
岡山県倉敷市児島味野1-11-19
1-11-19 Kojima Ajino, Kurashiki-city, Okayama