台東区入谷駅から徒歩3分程の場所にある 昭和3年(1928年)築の銭湯「快哉湯」。次の目的地へ向かう途中 味わいのある外観に惹かれて建物の中へ。長い間風雨にさらされて褪せた木枠のガラス扉をガタガタと鳴らしながら開けると 使いこまれた小ぶりの下駄箱がずらり。この時はすべて下駄箱だと思っていたのですが 正面にあった松竹錠(木札錠)ではないロッカーは 傘を横にして収納する傘入れだそうです。
かつての脱衣所に入るとスタッフの方がいて 2016年11月に銭湯としての営業を終え 改装して今はオフィスやラウンジとして使われているのだと教えていただきました。男女の脱衣所を仕切っていた壁も番台もそのまま残されており ”快哉湯” と書かれた大きな柱時計も健在。
こちらはぜひどうぞと登らせていただいた番台上からの眺め。正面に柱時計があり その先にある浴室もよく見渡せます。浴室内に作られた壁などは新しい木材が使われているようでしたが 手を加えず残された部分も多く 建物全体から懐かしさが溢れています。
当時の雰囲気を味わえるのは建物だけでなく小物にも。今は存在しない “坂本警察署” と書かれた心得は 昭和35年の合併により坂本警察署という名称がなくなったようなので 少なくとも60年以上前のものということになります。
かつての男性用脱衣所から見える小さな縁側と坪庭もそのままなのだそう。晩夏の夕暮れなんかに お風呂あがり窓を少しあけた縁側に腰掛けて 通りの音を聴きながら涼むなんて最高だったでしょうね。
今はオフィスとして使われているという浴室エリアも見せていただきました。真ん中にあった間仕切り壁は取り払ったものの 天井高7mだという広い空間の壁は ペンキ絵も含めほぼそのまま残されているのだそう。浴室の広さに対して小さめだというタイル貼りの浴槽もそのままでした。新たに作られた床板や収納棚はまだ新しい木の雰囲気でしたが 使い込まれていくうちに馴染んでとてもいい雰囲気になりそうです。
そして何もしないと剥がれていく一方だという 大きな富士山が描かれたペンキ絵。ペンキ絵を描く絵師は今はもうわずかだと聞くので とても貴重なものなのだろうと簡単に想像ができます。男湯と女湯それぞれに描かれた絵を同時に見ることができるのも今だからこそ。この建物にこのペンキ絵がとても似合っているので いつまでもこの場所を彩り続けて欲しいなと思います。
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東京都台東区下谷2丁目17-11
2-17-11 shitaya, Taito-ku, Tokyo