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  • 昔の生活に思いを馳せて月を愛でる中秋の名月 Full Harvest Moon

    昔の生活に思いを馳せて月を愛でる中秋の名月 Full Harvest Moon

    十分な明かりがない時代 ましてや現代のように夜でも煌々と街灯が灯ることなどない暮らしの中では 闇夜を照らす月はどれほど貴重で神聖なものだったでしょう。月の朔望でひと月を知り 今よりも深く日々の暮らしに関わっていた月。そんな生活の中では月を愛でるのは自然なことのような気がします。月の愛で方は様々で 水面や盃の酒に月を映したり歌や俳句によんだり。 今年は月見団子を作って近くの公園へお月見にでかけました。団子はまん丸だと枕団子(通夜に死者の枕元に供える枕飾りの1つ)と似て縁起が悪いという話を聞いたので 少し潰した形で。サイズは十五夜にちなんで1寸5分でというのも見ましたが あまり神経質にならず食べやすい大きさで。 お月見は旧暦8月15日の「十五夜(じゅうごや)」だけでなく旧暦9月13日の「十三夜(じゅうさんや)」また旧暦10月10日の「十日夜(とおかんや)」にも行う風習があったそうです。この浮世絵のように風流なお月見とはなりませんでしたが 時折雲間からのぞく月をのぞむ素敵な夜でした。 Source:http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/

  • 人々の生活に根ざし親しまれてきた世田谷区民会館と区庁舎 Setagaya City Hall & City Office

    人々の生活に根ざし親しまれてきた世田谷区民会館と区庁舎 Setagaya City Hall & City Office

    世田谷線世田谷駅から徒歩5分ほどの場所にある「世田谷区役所」。再整備により改築されてしまうということで 改修工事が始まる前に今の姿を見ておきたいと行ってきました。駅から歩いて向かっていると閑静な住宅街の中にふと現れる大きなコンクリートの建物。 敷地正面には区民会館と区庁舎をつなぐピロティがあり そこを抜けると朱色と濃灰色のブロックが敷き詰められた広場があります。広場の左手にあるのは折板構造という折り紙のように波打ったコンクリートの壁をもつ区民会館。この折板構造というのは柱も梁もなく薄い壁でできているのに丈夫なんだとか。 そしてそこから振り返ると煙突が象徴的な区庁舎があり 今回の改築でこの建物は全て取り壊されてしまうそうです。保存・改修で残されるのは区民会館のホール部分のみ。この第一庁舎(1960年完成)と第二庁舎 そして区民会館(1959年完成)はモダニズム建築で知られる前川國男さんの設計によるもので 建物がもつバワーは健在です。 竣工から約60年が経ち確かに古さや傷みは目立つものの やはり壊してしまうのは寂しいなと思ってしまいます。コンクリート壁の表面に染みた雨や流れつたうサビのあと。建物の表面をはう配管や剥げて薄くなったペンキ。どれも心をくすぐります。 この建物たちと同じように人々に親しまれる市民のための建物へと生まれ変わり たくさんの人が集う場所となって 今までこの場所を造ることに携わった人々がの想いが繋がるのであればいいな。 世田谷区役所 Setagaya City Office 世田谷区世田谷4-21-27 4-21-27 Setagaya, Setagaya-ku, Tokyo

  • かつて南蛮貿易の中心地として栄えた穏やかな城下町平戸 Hirado

    かつて南蛮貿易の中心地として栄えた穏やかな城下町平戸 Hirado

    長崎県北西部に位置する「平戸(Hirado)」。佐世保駅から松浦鉄道(MR)に乗って向かいました。タクシーの運転手さんに松浦鉄道と伝えると “MRね” と言っていたので 地元ではMRという言い方の方が馴染みがあるのかもしれません。平戸島には鉄道が通っていないので最寄駅は「たびら平戸口駅」。”日本最西端の駅” だそうで 長い間でも電車を待ちたくなる雰囲気の駅でした。 駅に着いて最初に向かったのは「田平天主堂(Tabira Catholic Church)」。たびら平戸口駅から車で10分程 緩やかな山道をのぼった先にあります。田平天主堂は赤煉瓦がとても美しい教会で 雲1つない晴天だったこの日は 青空と赤煉瓦のコントラストが映えて絶景でした。 竣工は1917年(大正6年)で 案内板には “建設は信徒の手作業によって行われました” とありました。レンガで豊かに表現されている装飾が美しく この装飾によってできた凹凸の横にさす影がさらに魅力的に見せています。 今回長崎でいくつか訪れた教会に必ずあったのが「ルルド(Lourdes)」。ルルドとは南フランスにある町の名前で ここで表現されているのはこの地にある洞窟に現れた聖母マリアと少女のある場面。聖母マリアが起こした奇跡の話が世界中に広まり 今ではルルドの泉が巡礼地の1つになっているそうです。 田平天主堂を見学させていただいた後は平戸島と本土を結ぶ真っ赤な平戸大橋を渡って 平戸市の中心部へ。平戸島は南北に細長い島で 今回は島の北部に位置する平戸城周辺を歩いて見てまわりました。 大通りから山の方へ続く石畳を少し歩いていくと 右手に瑞雲寺と光明寺が並んで見えてきます。そしてお寺越しに見えてくるのが「平戸ザビエル記念教会(Saint Francis Xavier Memorial Church)」。 静かで歩いていてとても心地よい石畳の細道。そこからつづく階段を登りきると平戸ザビエル記念教会があります。遠くからでもすぐわかるモスグリーンの壁に白い柱が特徴です。 そのあとは平戸港の海岸線と平行に続く道を北へ歩いて行きます。ときどき気になるものを見つけては寄り道をしつつ のんびり散策。こちらは「大蘇鉄(Great Cycad)」と案内のあった南国っぽい葉をつけた大きな樹。 大蘇鉄の横には鳥居に続く長い階段。せっかくなので上ってみると「天満神社(Tenman Shrine)」と書かれた とても古い神社のようでした。 さらに道をすすんでいくと所々海が望める場所があり 遠くに平戸城も見えました。残念ながら平戸城は現在改装中らしく足場に囲まれていましたが 山の上に立派な城が建っています。帰りに乗ったタクシーの運転手さんに聞いたところ 宿泊施設としてオープンするための改装なのだとか。お城に泊まることができるようになるなんて 完成が楽しみです。 平戸港の端に建つ「平戸オランダ商館」まで このままのんびり散策。この場所にはせかせかした雰囲気がなかったので 本当にのんびりといった言葉がぴったりでした。 平戸港周辺を散策したあとは来た時と同様 たびら平戸口駅から松浦鉄道に乗って佐世保に戻ります。本当に短い滞在時間だったので後ろ髪を引かれつつ 佐世保までは1時間半ほどかかるので早めに街を出発。最後にどうしても見たかった佐世保の海。夜景が美しいということで 日が完全に沈むまで堪能しました。 平戸 Hirado

  • 人々が集まる場所として灯りをともし続ける快哉湯 Kaisaiyu Office & Lounge

    人々が集まる場所として灯りをともし続ける快哉湯 Kaisaiyu Office & Lounge

    台東区入谷駅から徒歩3分程の場所にある 昭和3年(1928年)築の銭湯「快哉湯」。次の目的地へ向かう途中 味わいのある外観に惹かれて建物の中へ。長い間風雨にさらされて褪せた木枠のガラス扉をガタガタと鳴らしながら開けると 使いこまれた小ぶりの下駄箱がずらり。この時はすべて下駄箱だと思っていたのですが 正面にあった松竹錠(木札錠)ではないロッカーは 傘を横にして収納する傘入れだそうです。 かつての脱衣所に入るとスタッフの方がいて 2016年11月に銭湯としての営業を終え 改装して今はオフィスやラウンジとして使われているのだと教えていただきました。男女の脱衣所を仕切っていた壁も番台もそのまま残されており ”快哉湯” と書かれた大きな柱時計も健在。 こちらはぜひどうぞと登らせていただいた番台上からの眺め。正面に柱時計があり その先にある浴室もよく見渡せます。浴室内に作られた壁などは新しい木材が使われているようでしたが 手を加えず残された部分も多く 建物全体から懐かしさが溢れています。 当時の雰囲気を味わえるのは建物だけでなく小物にも。今は存在しない “坂本警察署” と書かれた心得は 昭和35年の合併により坂本警察署という名称がなくなったようなので 少なくとも60年以上前のものということになります。 かつての男性用脱衣所から見える小さな縁側と坪庭もそのままなのだそう。晩夏の夕暮れなんかに お風呂あがり窓を少しあけた縁側に腰掛けて 通りの音を聴きながら涼むなんて最高だったでしょうね。 今はオフィスとして使われているという浴室エリアも見せていただきました。真ん中にあった間仕切り壁は取り払ったものの 天井高7mだという広い空間の壁は ペンキ絵も含めほぼそのまま残されているのだそう。浴室の広さに対して小さめだというタイル貼りの浴槽もそのままでした。新たに作られた床板や収納棚はまだ新しい木の雰囲気でしたが 使い込まれていくうちに馴染んでとてもいい雰囲気になりそうです。 そして何もしないと剥がれていく一方だという 大きな富士山が描かれたペンキ絵。ペンキ絵を描く絵師は今はもうわずかだと聞くので とても貴重なものなのだろうと簡単に想像ができます。男湯と女湯それぞれに描かれた絵を同時に見ることができるのも今だからこそ。この建物にこのペンキ絵がとても似合っているので いつまでもこの場所を彩り続けて欲しいなと思います。 快哉湯 Kaisaiyu Office & Lounge https://www.kaisaiyu.com/ 東京都台東区下谷2丁目17-11 2-17-11 shitaya, Taito-ku, Tokyo

  • ステンドグラスとペルシャ絨毯の色彩が混ざり合うマスジェデ・ナスィーロル・モルク Nasir ol Mulk Mosque

    ステンドグラスとペルシャ絨毯の色彩が混ざり合うマスジェデ・ナスィーロル・モルク Nasir ol Mulk Mosque

    シーラーズ バザーレ・ヴァキールから10分ほど歩いた場所にある「マスジェデ・ナスィーロル・モルク(Nasir-ol-Molk Mosque)」。1888年に12年の歳月をかけて完成したというこちらのモスク。現地の方は “ピンクモスク” と呼んでいました。通りの突きあたりにある入口から中に入ると 中心に池のある広い中庭にでます。池の周りの緑や少し褪せた木製の扉、タイルの柔らかい色あいで温かい雰囲気です。 こちらはアーチの内側にあしらわれた装飾。鍾乳石に似せたデザインでムカルナス(muqarnas)というそう。細かな凹凸1つ1つにまで模様が描かれており 見上げて見ればみる程惹き込まれていきます。タイルに描かれているのはピンクモスクと呼ばれる所以にもなっているピンクの花々。他ではあまり見かけなかった建物が描かれた部分もありました。 その奥にあったのはイマームザーデ(Imamzadeh)。いわゆる廟。ここは中庭の雰囲気とは違い 青を基調としたタイルで幾何学模様が描かれています。 中庭の東側にはアーチを支える柱がいくつも並ぶ 広い列柱空間がひろがっていました。あとで訪れる向かいの礼拝堂と造りは似ているのですが 全く異なる雰囲気。 奥の部屋では昔使用されていた井戸を見ることができるようになっていました。井戸から水を汲む動力に牛を使用していたようで 井戸に設置した滑車から伸ばしたロープを牛に繋いで 地下道を歩かせる様子が再現されていました。昼間でも薄暗い地下道は独特。 いよいよ西の礼拝堂へ。シーラーズへはこの礼拝堂を目的に来る方も多いという人気の場所。ガイドブックやいくつかのサイトでは 冬の早朝にしかステンドグラスが床に映る美しい景色を見ることができないとあり諦めていましたが なんとか見ることができました。 前日夕食をとったレストランの方に 今の時期は11:00〜11:30頃がベストと教えていただき 冬でもないし早朝でもないのに見られるの?と半信半疑でしたが 9月でもこんなに美しい光をみることができました。冬ならもう少し太陽が低く 床一面に光が差し込んだ様子を見ることができるのかもしれませんが大満足。 この日の朝8時頃は確かに建物内に差す日の量がとても少なかったです。ですが一面に敷き詰められたペルシャ絨毯に装飾の施された柱がいくつも並び 天井が美しいタイルで埋めつくされた重厚な建物の雰囲気を味わうなら 観光客も少なくステンドグラスの光が邪魔をしないこういった時間帯に訪れるのもよいと思います。 マスジェデ・ナスィーロル・モルク Nasir ol Mulk Mosque Lotf Ali Khan Zand Street, Shiraz, Iran

  • 迷路のようなバザールで人々の日常に触れるバーザーレ・ヴァキール Vakil Bazaar

    迷路のようなバザールで人々の日常に触れるバーザーレ・ヴァキール Vakil Bazaar

    シーラーズ 街の中心から南西に長く伸びる「バーザーレ・ヴァキール(Vakil Bazaar)」。強い日差しと暑さから逃れるようにアーケードのあるバザールへ。ホシュク川近くのホテルに滞在していたので そこから一番近いバーザーレ・ノウ(No Bazaar)の入り口から中へ入ると 壁面から高い天井までレンガ造りの美しいアーケードが続き とても暑い外とは比べ物にならないほど快適。 バザールには様々なお店が並んでいて 暑い国の料理には欠かせない香辛料も山盛り。服は既製品を買うよりオーダーすることの方が多いのか 反物の生地が並んでいるお店をよく見かけました。 アーケードは途中で大通りを挟んでバーザーレ・ヴァキールへと続き 枝分かれしながらシャー・チェラーグ廟まで長く続いていきます。通りによってアーケードのデザインなどが異なり それぞれ少しずつ違った雰囲気で歩いているだけで面白かったです。 バザールの中は食料品エリア、日用品エリア、工芸品エリアといったように 同じ系統のお店が並んでいて ここはペルシア絨毯の店が多く集まっていた場所。ペルシア絨毯は現地の人々には欠かせないもので 公園や街角ではみんながレジャーシートのように使っているのをよく見かけました。店に並ぶ絨毯は素材も柄もサイズも様々で 見ているとあっというまに時間がたってしまいます。 バザールを歩いている時に 少しの間日本に住んでいたことがあるというおじさんと知り合いました。伝統的なバザール「サラエ・モシール(Saraye Moshir)」では 観光客そっちのけでカメラの前でポーズをとる陽気な方で 半日近く観光に付き合ってくれました。 サラエ・モシールには工芸品のお店が多く集まっており 店内で職人さんが作業している様子を間近で見ることができたのもよかったです。木材に施された緻密な細工はどれも本当に美しかった。 このあたりはいくつかのバザールが入り組んでいて 人通りが多い場所では何度か道に迷ってしまい 再度同じ店を訪れることができるか不安だったので 欲しいものが見つかった時には迷わず買うしかありません。 こちらは照明の装飾がおしゃれでとても好きな雰囲気だった バザールのメイン通りから横に伸びた通路。 歩き疲れてひと休みしたのは おじさんが案内してくれたバザールの一角にある「Seray-e Mehr」というレストラン。現地の人々がよく飲むという温かいお茶でほっと一息。お茶には砂糖の結晶がついた棒が添えられており これでかき混ぜつつ好みの甘さにしていただきます。 昼間は日差しが強くて屋根のないバザールの外を歩く気にはなれなかったのですが 日が傾いてくるとぐっと暑さがやわらいで 散策するにはちょうどいい時間帯になってきました。 近くの広場には人がどんどん集まってきて とても和やかな雰囲気。噴水のまわりではしゃぐ子どもたちの声を聞きながら ベンチに座って過ごす時間は最高でした。 バーザーレ・ヴァキール Vakil Bazaar

  • 静かに光輝く鏡のモザイク装飾が埋め尽くすアリー・エブネ・ハムゼ聖廟 Ali Ibn Hamzeh Holy Shrine

    静かに光輝く鏡のモザイク装飾が埋め尽くすアリー・エブネ・ハムゼ聖廟 Ali Ibn Hamzeh Holy Shrine

    シーラーズ ハーフェズ通りホシュク川近くにある「アリー・エブネ・ハムゼ聖廟(Ali Ibn Hamzeh Holy Shrine)」。まわりに高い建物がないので 遠くからでも青く美しいドームが目を惹きます。イランで訪れたほとんどのモスクがそうだったのですが 中に入る際女性はチャドルと呼ばれる体全体を覆う衣装の着用が必要で 入り口に貸し出し用のチャドルが用意されていました。中に入ると中心に小さな噴水と左右に大きな木がのびる中庭があり 足もとは1つ1つ文字が刻まれた様々な色の石畳。 さっそく正面にあるモスクの中へ。モスクは入り口から男女にわかれており 建物の中も中心にある木製の衝立によって部屋が完全にわけられていました。ドームのある部屋は柱からドームの天井まで一面緑色に輝く鏡のモザイク張りで 天井から下げられた豪華なシャンデリアの光を反射してとても煌びやか。ですが明るさが抑えられた静かな室内は落ち着きます。 部屋の隅にいくつも置いてあったこちらは ”モフル”といって礼拝の際に使うものなのだそう。モフルはイスラム教のなかでもシーア派のみが使用するもので シーア派の聖地の土でできており 礼拝でおでこを床につけるのではなく床に置いたモフルにつけるのだそうです。 奥にあったもう1つの部屋は 先ほどとは違い白を基調とした柔らかい雰囲気。 モスクの中では本を読んだり昼寝をしたり 小さな子どもが走りまわっていたりと みんな思い思いの過ごし方をしていました。 帰り際モスクの方がお茶とお菓子を振舞ってくださったので それをいただきながらひと休みしたら次の場所へと向かいます。 アリー・エブネ・ハムゼ聖廟 Ali Ibn Hamzeh Holy Shrine https://www.instagram.com/mirror_mosque/ Hafez Street, E Saheli St. Crossroad, Shiraz 71364, Iran

  • 街に溢れる緑がつくる木陰を探して歩く穏やかな街シーラーズ Shiraz & Mausoleum of Hafez

    街に溢れる緑がつくる木陰を探して歩く穏やかな街シーラーズ Shiraz & Mausoleum of Hafez

    西アジアに位置し多くの世界遺産を有する「イラン・イスラム共和国」。通称イラン。現在日本からの直行便はなく 飛行機を乗り継いで行ってきました。乗り継ぎの時間を除くと成田空港から12〜13時間程で イランの首都テヘラン(Tehran)にあるエマーム・ホメイニー国際空港に到着。現地で取得するアライバルビザではなく 日本で事前にe-VISAを取得していったので 到着後ほとんど待つことなく入国できました。 翌朝には最初の目的地シーラーズ(Shiraz)へ。シーラーズはテヘランから飛行機で南へ1時間半程の場所にあり 国内線のフライトチケットは現在日本からの購入が難しいので 現地の旅行会社を通して事前に予約した飛行機で向かいました。シーラーズ市内には東西方向にホシュク川(Khoshk River)が通っており ホテルに荷物を預けてさっそくホシュク川の北側から散策開始。 この時期水の流れていないホシュク川。川にかかる橋を渡って北へ向かって歩いていると 緑のない山肌をとても近くに感じます。このあたりは車通りも少なく静かな住宅街といった雰囲気。ハーフェズ通り(Hafez St.)では 今回の旅でほとんど見ることのなかったウォールアートもいくつか見かけました。 通りで見つけた 丸みを帯びたフォルムがなんだか可愛かった公衆電話。 ホシュク川の北側には庭園や大きな公園が点在し 暑さから逃れて歩いた公園では 木陰に絨毯を広げてランチをしている何組かの家族を見かけました。 公園を抜けると見えて来たのが「ハーフェズ廟(Mausoleum of Hafez)」。 中は整備された綺麗な庭園になっており 中心にある八角形の屋根をもつ象徴的な建物には多くの人が集まっていました。ここはイランでとても愛され有名な詩人のハーフェズのお墓だそうで みんなここに置かれた石の棺にそっと触れていきます。 庭園横に建てられたメモリアルホールの中にもいくつか石の棺があり どれも表面には細かな彫刻が施されていました。建物の横ではシェイブアイスが売られていたり チャイハネと呼ばれるカフェのようなお店もあって 庭園の緑は美しく全体的に憩いの場という雰囲気でした。 シーラーズ Shiraz

  • カバンとともに世界を旅する世界のカバン博物館 World Bags & Luggage Museum

    カバンとともに世界を旅する世界のカバン博物館 World Bags & Luggage Museum

    東京浅草線浅草駅から程近い場所にある「世界のカバン博物館(World Bags & Luggage Museum)」。何度か旅を重ねるうちに自分の旅のスタイルにあったバッグが欲しくなり まずはカバンの知識を増やすところからということで行ってきました。博物館はカバンの製造・販売をおこなっているエース株式会社が運営しており エース本社内にあります。入場無料なので1階で簡単な受付をすますと さっそく博物館のあるフロアへ。 エレベータをおりると広い空間に円筒形の壁で仕切られた展示スペースがあり 壁一面に掛けられていたのは様々なバッグ素材。最初はその向かいにある “カバンの歴史” から見ていきます。カバンの歴史は古く生活様式や服装などにも影響され 徐々に変化していく様子がわかります。人々が自由に旅行ができる時代になり一気に変貌を遂げた印象でした。 円筒形の中の展示は “カバンのひみつ”。カバンづくりの工程や技術などが見られ 分解されたスーツケースの全てのパーツが並べられた展示では 様々な技術の結集であることが感じられます。 ところでカバンカバンと言っていますが カバンとは… かばん【鞄】※一部抜粋 革またはズックなどで作り、中に物を入れる携帯用具。 Source:広辞苑 カバン博物館の歴史の展示の中ではこのように紹介されていました。 初期のカバンは手胴乱と呼ばれていたが「カバン」という呼称がでてきたのが1873年(明治6年)。1887年(明治20年)には、谷澤禎三が日本で初めて鞄(カバン)という文字を掲げて店を開いたのじゃ! Source:世界のカバン博物館 博物館の奥のエリアに展示されていたのは世界中から集められたという “世界のカバンコレクション”。この博物館で集められた収蔵品は550点にものぼるそうで そのうちのいくつかが五大陸に分けて並べられていました。 こちらは最初に展示されていた オーク材の木枠に生革を表装したという1950年代に製造されたカバン。大容量で平積みができるこの形は ポーターが荷物を運ぶ船での長旅を想像させます。 カバンの中が見られるものは少なかったのですが やはり特定のものを収納する為につくられた専用のバッグは魅力的で心くすぐられます。こちらは「化粧用具ケース」で1910年代にフランスで作られたもの。様々なサイズのコスメボトルがぴったり収まっています。深さのあるケースのちょうど真ん中の仕切り板にボトル収納が作られているので その奥にも何かが収納できそうです。 五大陸様々な場所から集められているので 中には空き缶や瓶の王冠で作られたカバンなんかもありました。 これだけのコレクションを無料で見ることができるだけでなく Googleストリートビューでも館内を見ることができるようになっていました。ですが訪れることができる方は実際に間近で細部までご覧いただけるとよいと思います。それぞれの時代、それぞれの場所で培われた技術や感性に触れて 今まで知らなかったカバンの魅力を知ることができると思います。 新川柳作記念館 Tyusaku Shinkawa Memorial 世界のカバン博物館の1つ上のフロアにあったのは「新川柳作記念館」。エース株式会社創業者の生涯が会社とカバンの歴史とともに紹介されています。きっと見る人が見れば懐かしいと感じるであろう広告もいくつかありました。 モノづくりの発展に寄与した方の生涯に触れると いつも人がとても好きなんだと感じます。人との縁や使い手のことを大切にし 挑戦と試行錯誤が重ねられた末にこれらの製品が生み出されている。やはりいい人材からしかいい物ができない、いい人がいい物を作るということなのかもしれません。 世界のカバン博物館 World Bags & Luggage Museum  https://www.ace.jp/museum/  東京都台東区駒形1-8-10  1-8-10 Komagata, Taito-ku, Tokyo  TEL:003-3847-5680  

  • 手の先の小さな飴に夢中になる娯楽であり芸術でもある飴細工  Japanese Candy Craft – Amezaiku

    手の先の小さな飴に夢中になる娯楽であり芸術でもある飴細工  Japanese Candy Craft – Amezaiku

    東京浅草駅から歩いて5分ほどの場所にある飴細工のお店「アメシン(Ameshin)」。飴細工の体験ができるということで行ってきました。浅草寺近くの細い路地にある藍色の店舗はまだ新しく 入口付近に商品と作品がいくつか並び その奥の広い空間が体験教室になっていました。 まず飴細工とは… 飴細工は90℃程まで熱してやわらかくした飴を、素手と握りバサミ一本を使って美しく造形する日本の伝統文化です。飴の温めると柔らかく、冷めると固まる性質を使って作る飴細工は、鍋から飴を取り出してから数分で造形を終わらせなければいけません。飴細工は彫刻とは違い、削りとったり切り落としたりすることはしません。棒の先につけた丸い飴を、ハサミで切ったり伸ばしたらしながら飴を無駄にすることなく作り上げます。 Source:http://www.ame-shin.com/ 体験教室は手を洗うところからはじまります。案内されたテーブルには今回つくるウサギの見本と 1人ずつ飴細工に使用するハサミが用意されていました。普段裁縫をする際に使用する糸切り鋏(握り鋏)と形は似ていますが 糸切り鋏よりも大きく手のひらでしっかり握れるサイズ。そして役割は切るだけではなく つまんだりくびれを作ったり模様をいれたりと万能です。 はじめに飴の扱い方とハサミの使い方を教わり さっそく練習用の飴を使用して作ってみます。作り方のポイントやコツなどを教えてもらうのですが やはり思っていた以上に難しい。目の前の職人さんの手の中の飴はあんなにひょいひょいと形を変えていくのに こちらの飴はまったく言うことを聞いてくれず…。 実際に飴細工を作るのは練習用の飴で2回と 白い飴で作る本番1回です。1回めは柔らかい飴を棒の真ん中に留めておくことに苦戦して手順を追うことで精一杯。2回めは造形に夢中になっているあいだに飴が固まってしまい時間切れ。どちらも見本のウサギとは程遠いものに…。すこし自信あり気だった友人も隣で大苦戦していました。 あっというまに3回のウサギづくりが終わり 食紅で目と鼻を描いて完成させた作品がこちら。3回作った中では一番うまくできたと思うのですが なんとかウサギにみえるでしょうか。見本からは程遠い出来ですが 自分で作ったというだけで可愛さ倍増です。 こちらはとても素敵だった店舗入口に飾られていたカエルの作品。飴細工を体験したあとでは 丸い飴から短時間でなぜこのような形が作りだせるのかますます不思議になるばかり。職人技に感動です。 最後にアメシンさんが公開されていた動画があったのでご紹介。透明の飴のかたまりから飴細工の金魚ができていく様子が映像になっています。金魚といえば夏の季語。夏の夕暮れどき 下町をそぞろ歩きしているときに出会いたくなるような 風情ある映像です。 Source:https://www.youtube.com/ アメシン(花川戸店) Ameshin-Hanakawado Studio  http://www.ame-shin.com/  東京都台東区花川戸2-9-1 堀ビル1F  1F Hori bldg, 2-9-1 Hanakawado, Taito-ku, Tokyo  

  • 夜を徹してアートを楽しむ六本木アートナイト2019 Roppongi Art Night 2019

    夜を徹してアートを楽しむ六本木アートナイト2019 Roppongi Art Night 2019

    Source:https://www.roppongiartnight.com/2019/ “夜の旅 昼の夢”と題し六本木の街を舞台として開催された「六本木アートナイト(Roppongi Art Night )」。毎年一夜だけ催されるこのイベントは 第1回めの開催からかぞえて今回で10年め。夕方と呼ぶには少し早い時間に会場周辺へ向かい 翌朝までどっぷりアートに浸ってきました。 今回のメインプログラムは崔正化(Choi Jeong Hwa)さんによるカラフルでポップな作品たち。東京ミッドタウンに展示された「ライフ・ライフ(Life, life)」と六本木ヒルズアリーナに展示されていた「フルーツ・ツリー(Fruit Tree)」。 他にもいろいろ見てきたのでいくつかのインスタレーションを紹介します。まずは独特の濃淡が好みだった「Spin a Memories.」。キャンバスが大量のレシートでできていて 熱による変色によって描かれた作品です。 夜の街でとてもキレイだったのが「暗闇の中の虹(Rainbow in the Darkness)」。鑑賞者によって削られた思いおもいのメッセージやイラストによって幻想的な作品になっていました。 街中で見つけたときに驚いたのが「囚われる人(Entangled)」。次々と細長いケースの中に囚われた人たちが現れる映像作品。すりガラスの向こうに人がいる感じがリアルで アート作品だと知らずに見たら本当にびっくりすると思います。 Paul Smithの店舗でみることができたのは RUDEによって描かれたというポスターの数々。店の外からでも煌々と明るい店内の壁一面に飾られた額縁が目を惹きます。サイズもデザインも様々な額縁に収まっていたのは カラフルなポスターだったりモノクロの写真だったりこちらも様々。天井まで隙間なく額縁が並べられた展示がとてもおしゃれでした。 この日は美術館も通常より長く開館しているので 街中のインスタレーションを鑑賞する以外に展覧会にも行ってきました。いつもは閉館している静かな夜の時間に美術館を訪れることができるのも アートナイトの楽しみのひとつです。 information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美 @サントリー美術館 Source:https://www.suntory.co.jp/sma/ 最初に訪れたのは東京ミッドタウン内にあるサントリー美術館(Suntory Museum of Art)。展示室は展示作品を挟んで “information” と “inspiration” の2つの通路がつくられており 同じ作品をそれぞれの部屋から鑑賞するというもの。”information”の白い部屋には作品にまつわる情報が並び ”inspiration”の黒い部屋には文字情報などは一切なく作品があるのみ。 1つの作品を左右の道から眺めるものもあれば この藍色徳利のように同じ作品でも少し異なる展示方法がとられているものがあり 案内の通り同じ作品群でも2度楽しむことができました。 会場の中間あたりで展示されていたのは 鑑賞者がそれぞれ傘を持って体験することができる「uncovered skies」。スポットライトに照らされた白いステージで傘をさすと 傘の影の中に空模様が現れるというもの。白い光となって写しだされた映像の中で 傘(偏光フィルム)に遮られた部分だけが目に見える映像として写るのだそう。傘を持ってステージをゆっくり歩いていくと 傘の影の中にだけ雲が流れ落ち葉や雪が舞い 鳥や飛行機が横切っていくというなんとも不思議で素敵な体験でした。 Roppongi Crossing 2019:Connexions 六本木クロッシング2019展:つないでみる @森美術館 Source:YouTube/Mori Art Museum 次に訪れたのが六本木ヒルズ森タワーにある森美術館(Mori Art Museum)。1970-80年代生まれを中心とした日本のアーティスト作品が展示されているという 今回の六本木クロッシング展。様々なジャンルの作品が展示されていましたが 気に入った作品を並べてみると自分の好みがよくわかります。 ◆佃 弘樹(Tsukuda Hiroki) / From the Lake ◆青野文昭(Aono…

  • 移りゆく季節により添う豊かな暮らしを体全体で感じる四国村 Shikoku Mura Village

    移りゆく季節により添う豊かな暮らしを体全体で感じる四国村 Shikoku Mura Village

    香川県高松市 琴電屋島駅から歩いて5分ほどの場所にある「四国村(Shikoku Mura Village)」。昭和51年に開設された野外博物館で 入り口でいただいたマップを片手に好きなコースで村の中を歩いていきます。入り口から続く石畳のゆるやかな坂を歩いていくと はじめに出会うのが池に架かった「かずら橋」。祖谷のかずら橋とくらべると小さいですが ちゃんと渡ることができる立派なもの。本物は怖くて渡れないという人も こちらならきっと大丈夫だと思います。池に浮いているのは現在開催中の瀬戸内国際芸術祭2019の作品の1つ「Suitcace in a Bottle」。 村を歩きはじめてまず驚くのがその広さ。”四国各地から古い民家を移築復原した野外博物館” ということだったので 建物が立ち並んでいる様子を想像していましたが 実際は樹々の間に建物が点在し 歩いていると実際に山間の村を訪れた気分になります。 各建物は入口が解放されており中の様子も見ることができました。1つ1つに細かな説明もあり 建物の中には昔の道具が展示されていたりするので 当時の生活の様子を伺い知ることができます。石垣の上に見える茅葺き屋根の建物は「旧河野家住宅」。ここでは楮(こうぞ)という和紙の原料を蒸す大きなクドと桶などを見ることができました。 円錐形の屋根が特徴のこの建物は「砂糖〆(しめ)小屋」。江戸時代後期 讃岐の特産品だったという砂糖。その砂糖を作るサトウキビ搾汁の為の小屋だそうです。四角い建物では見られない珍しい屋根の構造なども見ることができます。 この砂糖〆小屋の中央には3個の石臼があり 牛が石臼につながっている腕木を引いて回し 石臼に差し込んだサトウキビを搾るのだそう。牛の円運動を動力にすることから その作業空間に合わせて円形の建物がつくられており こうして得られた生汁を繰り返し煮沸して白下糖ができるそうです。 小屋をでてさらに村の奥へ。遊歩道でみかけるちょっとした石垣も素敵で 緑を見ながら歩いているだけでとても楽しい。 この先にあった村の中では珍しい現代の建物は 安藤忠雄さんが設計されたという「四国村ギャラリー(Shikokumura Gallery)」。この時開催されていたのは『猪熊弦一郎展「私の好きなもの」Part1(Genichiro Inokuma – My Favorite Things)』。猪熊弦一郎さんの好きなものエピソードと共に作品が展示されていました。 Source:https://www.shikokumura.or.jp/ 何かを純粋に好きになれること、素直に好きだという気持ちを形にすることはとても素敵なことで 実はなかなか難しいのではないかと思っています。なのでこの展示を見て猪熊さんのことが好きになってしまいました。 四国村ギャラリーをでて歩いていくと 竹林の手前に「茶堂(Tea Hall – Chado)」があります。鮮やかな花と石仏が祀られており 近くの案内板には “四国の古い道沿いに こうしたお堂があちこち建っていた” と。お遍路さんの休み場や村人の集会にも利用されたとあって 人々のふれあいの場だったことがわかります。そういえばネパールの町にも同じような休憩所(ファルチャ)があったことを思い出しました。 坂の上に見えてきたのは「大久野島燈台」。戦争中軍事機密のために地図から消されていた時期があるという大久野島。この燈台は明治26年に島の南端に建設されたものだそうです。 燈台のそばに造られていたのが「燈台退息所」。燈台守とよばれる方々が住み燈台の管理を常に行っていたそうです。現在日本の燈台はすべて無人化され それとともに燈台守も消滅し燈台退息所は不要のものとなりました。燈台は辺ぴな所に建っていることも多く 燈台守の生活は決して楽なものではなかったといいますが ここで見られる住まいは 洋風の中に和風の要素が取り入れられた造りで 安らげる場所になっていたのではないかなと感じられる素敵な建物でした。 ここは「染が滝」につながる池で かなりの癒しスポットです。 資料館として公開されていたのは「旧丸亀藩御用蔵」。江戸後期の建築であると推定されているこの米蔵の中では 人形浄瑠璃の衣装などが展示されていました。間近でみる人形の顔は迫力があります。 四国村の中では比較的広く大きな建物だったのが「醤油蔵」。蔵の中には大きな仕込み桶をはじめ 諸味袋や醤油甕など当時使用されていたものが所狭しと並べてありました。麹室もあり以前味噌蔵でみたものに似た麹蓋が壁一面に積み上げられていました。 どの建物も現役のような佇まいで 本当に村を歩いている気分です。道の途中にはこれから開花の時期を迎える紫陽花の葉が多く茂っている所などもあったので 季節によってまた違った村を楽しめると思います。まさに “二十四の季節がある村” でした。 四国村 Shikoku-Mura Village – Houses Museum  https://www.shikokumura.or.jp/  香川県高松市屋島中町91  91 Yashima nakamachi, Takamatsu, Kagawa  TEL:087-843-3111